
天ぷらなど油を多く使った調理中に出火、火事の火元としてニュースでよく聞くフレーズではないでしょうか?
携帯電話の普及や温度センサー付きで自動消火する機能を持ったコンロの発売によって安全性は増してきているものの、住宅火災の原因として常に上位を占めているのはガステーブルなど台所が火元となっています。
そこで、今回は油が引火する原因や出火してしまった際の対処法について詳しく紹介していきます。
ふとした油断から火災は起きてしまうものです。
万が一、油に引火した場合にパニックを起こさないためにも、しっかりと対処法を頭に入れておいて冷静に対応できるように備えておきましょう!
目次
なぜ油が引火するのか?
「ちょっと目を離した隙に・・・」台所から出火して火災が起きると必ず耳にするフレーズです。
もちろん、一番大事な事は油を使った調理中に目を離さない事ですが「ちょっと」目を離しただけでどうして火災が起きてしまうのでしょうか?
揚げ物や天ぷらなど、油を高温に熱して調理する場合の温度は180℃を超えています。
油は、360~380℃以上になると発火するのですが家庭用コンロで熱し続けた場合を考えると、たった2~30分でその温度に達してしまいます。
電話や来客で「ちょっと」の間と思っていても火にかけたまま放置していればあっという間に引火するのも納得ですね。
ウチのコンロは自動消火機能が付いているから大丈夫。
ちょっと待ってください!
確かに、熱し過ぎを防止する為に一定時間を超えて熱し続けていると感知した際に自動で消化するコンロであれば360℃を超える前に火は止まります。
しかし、あくまでも”油だけ”を熱し続けた場合の話です。
もし、揚げカスなどが残っている状態だったとすれば200℃程度でも発火する可能性があります。
自動消火のセンサーは大抵、鍋底の温度が250℃を超えた場合などの設定になっています。悪条件が揃ってしまうと、自動消火機能が付いていても油に引火してしまう可能性は0では無いという事を覚えておいてください。
油に引火!!対処法は?
それでは、万が一調理中に引火してしまった際の対処法について解説していきます。
高温(360℃以上)になっている油が燃えているのですから、誤った対処法をすれば大惨事に繋がります。
これから初期消火として効果的な対処法をいくつか紹介していきますが、過信をせずに自分の手には負えないと判断した場合は速やかに通報する、避難するという事も忘れないでください。
住宅火災での死亡原因のほとんどは「逃げ遅れ」です。
慌てず冷静に対処を行い、もし火の手が広がってしまった場合は自分の命を優先して行動するようにしましょう。
①消化器を利用する
ご家庭に消化器を備えているのであれば、慌てず冷静に消化器を利用する方法が非常に効果的な対処方法です。
しかし、注意しなければならない点があります。
それは、消化器の種類によっては効果が無い・逆効果になってしまう可能性があるという点です。消化器には様々なタイプがあり、火災原因や火災発生の場所によって使い分ける必要があります。
油に引火した場合は「強化液タイプの消化器」が最も有効です。
逆に、水消化器に分類される水を使っているタイプの消化器は事態を悪化させる可能性があるので使わないようにしましょう。
②粉末消火剤を利用する
鍋に投げ入れるタイプの粉末消火剤を利用する方法もあります。
あまり粉末消火剤を常備しているという家庭は無いかもしれませんが、もし備えているのであれば効果的な初期消火となります。
火元である鍋に投げ入れるという使用方法である為、焦ってしまったり恐怖心から鍋にしっかり投げ入れられない可能性や、投げ入れた後に発生する煙で火元が見えづらくなるなどのデメリットもあります。
鍋から立ち上る火が小さい内に冷静に鍋に投入しましょう。
また、こちらの商品には液体ボトルタイプの消火剤もついています。
使い方は以下の動画のような形になります。
万が一のために、一家に一つ用意しておくことをおすすめします。
③鍋の蓋をする
発火してすぐであれば、冷静に火を止めて蓋をしてしまうのも効果的な対処法です。
炎が燃え続けるには酸素を必要とします。
蓋をしてしまえば、酸素の供給を断つことが出来るので、火は消えます。
炎が大きく立ち上ってしまってからは、火傷の心配や誤って鍋をひっくり返してしまう危険性があるので注意しましょう。
また、鍋の蓋をして鎮火してもすぐに蓋をあけないでください。
発火点以上に熱せられた油が自然発火してしまっている訳ですから、温度が下がっていなければ酸素の供給によって再び炎が上がってしまいます。
蓋をして鎮火したら、ガスであれば元栓を閉めて油の温度がしっかり下がるまでそのまま放置するようにしましょう。
④濡れたバスタオルやシーツを被せる
鍋の蓋が無い事もありますよね。また、火が大きくなってしまい蓋をするのが難しい場合などにもこの方法が有効です。
バスタオルやシーツを複数枚用意します。
一旦水に浸して、絞ってから鍋にかぶせていきます。絞る目安は、水がポタポタと落ちない程度です。
炎が大きい場合は、火傷に注意する必要があります。
また、恐怖心から濡れたバスタオルやシーツを投げて被せようとする事は絶対にやめて下さい。失敗して鍋をひっくり返してしまう可能性があります。
・乾いたバスタオルを被せるのは絶対にやめて下さい。火の手が大きくなり、被害が甚大になります。
・水がしたたる程濡れた状態で被せるのもやめて下さい。水によって油が飛び散り被害が大きくなる可能性があります。
⑤油を注ぐ、マヨネーズを入れる
火に油を注ぐような真似、ではなく実際に火に油を注ぐ方法です。
一応、油を追加投入する事によって消化できる可能性があるので紹介はしますが、おすすめはしません。
油やマヨネーズを追加で投入する事で、油の温度が下がります。
油の温度が下がれば鎮火へとつながりますが、必ず鎮火へと結びつく方法とは限らない方法と言えますから、おすすめは出来ません。
絶対にやってはいけない事
消化方法として、【絶対にやってはいけない事】も併せて紹介しておきます。
油に引火した際、絶対にやってはいけない事とは水をかけることです。
また、油の温度を下げようとして水分を多く含む野菜を入れる事も絶対にやめましょう。
火が上がっている油が入った鍋に水や野菜を入れると、火の手が急激に大きくなる場合があるほか、油が飛び散って火傷などの二次的災害につながってしまいます。
鍋から出火するとパニックを起こして水をかけてしまう方がいますが、被害が大きくなる為【絶対に水をかけないでください】。
油を使ったあとは冷まさないと危険!
最後に、油が引き起こす火災で特殊なケースを紹介します。
天ぷら油の処理を行い、ゴミ袋に捨ててゴミ袋から出火する事があります。
これは油が冷めていないうちに紙製の油処理用品で処理した事が原因による自然発火と考えられます。
沸騰した水が約100℃と考えれば、揚げ物や天ぷらで使用している油がどれほど高温なのかが解ります。
油は見た目が液体のまま高温になるため、冷えたと思っていても実は100℃を超えている可能性があります。
もうそろそろ良いだろう、と目視や感覚で判断せずに完全に温度が下がった事を確認してから処理をしないと思わぬ形で火災を引き起こすので注意しましょう。
まとめ
・油は360~380℃を超えると発火点となり出火する。
・消化器は油が引火した際に頼れる(強化液タイプ)。
・水を使ったタイプの消化器は油が引火した際は使わない事。
・蓋をする、濡れたバスタオルやシーツを被せるのも効果的。
・水は絶対にかけないように注意。
冒頭でも述べましたが、やはり一番の対処法は調理中に火元から離れない事です。
どうしても離れなければならない場合は、しっかりと火を止めてから離れる事が肝要です。
いざという時、人は普段なら出来るハズの事が出来なくなってしまうものです。万が一、油を使った鍋から火が出てしまったら落ち着いて火を止めて対処するように心がけましょう。