日本の果物の中でりんごはみかんと共に、国内生産量が常にトップを争うほど作られています。
そんな身近なりんごは美味しく、食卓に並ぶ機会も多い果物です。
しかし、りんごには一つ困った問題があります。それは、皮を剥いて時間が経つとなぜか茶褐色に色が変わってしまい食べる気が無くなってしまう見た目へと変貌する事です。
何故、りんごは時間が経つと色が変わってしまうのでしょうか?りんごが変色しない方法は無いのでしょうか?
今回は、そんなりんごの変色メカニズムと防止法について詳しく解説していきます。
どうしてりんごは変色するのか?
りんごが変色する理由とはどのようなことが原因なのでしょうか?
まず、結論から申し上げるとりんごの変色は「酸化」です。
単純に酸化で片づけるのは乱暴なのでもう少し付け加えると、酸化した結果りんごに含まれるポリフェノールの作用によって茶褐色になる、という事が原因です。
もう少し詳しくメカニズムを追っていきましょう。そもそも何故「酸化」してしまうのかという根本的なメカニズムを解説します。
りんごが酸化する、という現象にはおおまかに3つの要素が関与しています。
変色する要素
✔ 一つ目の要素は、言うまでも無く空気中の酸素。
✔ 二つ目は、りんごに含まれるポリフェノール酸化酵素と呼ばれる酵素(こうそ)
✔ 三つ目はりんごに含まれるポリフェノール群です。
りんごを切ってから酸化するまでのメカニズムは・・・
酸化メカニズム
1.皮が剥かれた状態のりんごが、空気中の酸素と触れる。
2.酸素に触れたポリフェノール酸化酵素が活性化する
3.酵素の働きで、酸素とタンニン(ポリフェノール化合物の一種)が化学反応を起こす
4.酸化する(色が茶褐色になるのはエピカテキンやクロロゲン酸というポリフェノールが原因)
以上が、りんごが酸化するまでのメカニズムです。
聞きなれない成分が出てきますが、とても簡単に言ってしまえば酵素の働きで酸化があっという間に進むという事ですね。
変色させない為には?
りんごが変色する理由が判ると、対処法も見えてくるものです。
一度は耳にするか、実際に見たことがある変色防止の方法は切ったりんごを塩水に浸ける方法では無いでしょうか?
りんごが変色するメカニズムから考えれば、酸化を止める方法は・・・
✔ 酸素と触れないようにする
✔ 酵素が働かないようにする
✔ ポリフェノールを無くす?
などが考えられますが、塩水に浸ける方法はどうして有効なのでしょうか?
それらの疑問に対する解説を織り交ぜながら、具体的にりんごの変色を防止する方法をいくつか紹介していきます。
塩水でりんごの変色を防ぐ方法と理由
まずは、先ほど少し触れた「切ったりんごを塩水に浸す」という方法について解説していきます。
まず、メカニズムからお話すると塩水に浸ける方法は酵素が働けない状況を作り出す事によって、酸化を防止しています。
実は、食塩水に含まれるナトリウムイオンはりんごに含まれる酵素と反応しやすいため酸素に触れる前に塩水に浸けておくと、りんごの酸化酵素は「先にナトリウムイオンと反応」してしまいます。
つまり、先客(ナトリウムイオン)がいるせいで手が離せない状態になるということです。
もちろん、先人がそれを知っていたかどうかはわかりませんが「りんごを切って塩水に浸ければ変色を防げる」という先人の知恵は化学的にも非常に合理的な防止法だったと言えるのです。
それでは、具体的な方法も紹介しておこうと思います。
どうやら、塩水に浸ける方法は「りんごがしょっぱくなる」として嫌う方が多くいるようです。もしかすると、方法に問題があるのかもしれませんよ?
【用意する物】
・ボウル
・水(切ったりんごがしっかりと浸る程度の水量)
・塩(水の量によって変動)
汚れ
手順
1.まず、切ったりんごがしっかりと浸せるだけの水を量ります。
塩の分量に関わってくる為少し多くなってもよいので、100ml単位で区切ると良いでしょう。
2.水の量が決定したら、水の量に対して「0.5%」の塩を量ります。
5%ではありません!たった0.5%です。100mlの水なら0.5gの塩です。
3.1と2を混ぜてよく撹拌して、食塩濃度5%の食塩水を作ります。
4.切ったりんごを3に入れて【1分】だけ浸して取り出します。
これだけです。恐らくですが、塩水に浸けてしょっぱい!と言う方は、塩分濃度が濃すぎるか浸ける時間が長すぎるのです。
味覚が鋭く、微妙な塩加減が付くのも許せないという方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、普通の味覚であればほとんど気にならないはずですよ。
ちなみに、これほど低濃度・短時間で効果があるのか疑問に思う方もいるのではないでしょうか?
大丈夫です。塩水で変色を防ぐ方法はナトリウムイオンと酸化酵素が反応する事で酸化を防ぐため、反応する時間と濃度で実践すればしっかりと効果が出る方法なのです。
この方法で変色を防げる時間はおよそ半日程度です。浸けたあとに、りんごをラップなどで包み空気に触れないようにすればより高い効果が期待できます。
レモン水でりんごの変色を防ぐ方法と理由
レモン水を使っても、りんごの変色を防げる方法があります。
方法は塩水同様、規定以上の濃度を持ったレモン水に切ったりんごを浸すだけです。
メカニズムも、実は塩水と同じです。レモンが、というよりレモンに含まれるビタミンCが酸化防止に役立つ成分なのです。
りんご加工品を作る工場などでは、ビタミンCそのものを酸化防止のために使っているため、効果は間違いないと言えるでしょう。
【用意する物】
・ボウル
・適量の水(切ったりんごがしっかりと浸る程度の水量)
・レモン果汁(水の量によって変動)
汚れ
手順
1.まず、切ったりんごがしっかりと浸せる水を量ります。
レモン果汁の分量に関わってくる為少し多くなってもよいので、100ml単位で区切ると良いでしょう。
2.水の量が決定したら、水の量に対して「5%」のレモン果汁を量ります。
もし、2.5%が計算しづらい場合は3%や4%など計算しやすい量でも構いません。ただし、濃度が濃くなればその分「すっぱく」なってしまいますので注意しましょう。
3.1と2を混ぜてよく撹拌してレモン水を作ります。
4.切ったりんごを3に入れて2~3分置いてから取り出しましょう。
食塩同様、ビタミンCも化学反応として酸化を防止する役割を持っています。
いわゆる、抗酸化作用を目に見える形にした方法と言えば解り易いでしょうか。
塩水に比べると、濃度や時間は少し多くなりますが塩味のりんごとレモン味のりんごとでどちらが良いかは好みの問題になるかもしれませんね。
やはり半日以上は酸化を防止してくれます。この方法も、ラップなどで包みりんごが空気に触れにくい状態にすれば期待できる効果は高まります。
砂糖やハチミツを使って変色を防ぐ方法と理由
最後に、簡単にではありますが砂糖やハチミツを使った変色を防ぐ方法も紹介します。
これは、「どうせ味を変えるなら、甘くて美味しい味がいい」という方におすすめの方法です。
酸化を防ぐ理由は、化学反応ではありません。砂糖やハチミツに含まれる成分や、水に溶かした際の水溶液に酸化酵素と結びつく性質は無いからです。
それでは、どうして砂糖やハチミツで酸化を防ぐ事が出来るのでしょうか?
実は、物理的に酸素に触れないような膜をりんごの表面に形成してコーティングするからと考えられています。つまり、剥いたりんごにまた皮を付け直すようなものです。
酸化防止の効果はしっかりとある方法なので、どうせなら甘い方がよいという方は試してみると良いでしょう。
手順と用意するものはこれまで紹介してきた方法とほぼ同じです。ただ、濃度と時間だけが大きく異なるので、その注意点だけをお伝えして簡単に紹介します。
【用意する物】
・ボウル
・適量の水(切ったりんごがしっかりと浸る程度の水量)
・砂糖 or ハチミツ(水の量によって変動)
汚れ
手順
1.まず、切ったりんごがしっかりと浸せる水を量ります。
2.水の量が決定したら、水の量に対して「5%」の砂糖もしくはハチミツを量ります。
100mlの水であれば砂糖やハチミツを5g入れる事になります。
3.1と2を混ぜてよく撹拌します。
4.切ったりんごを3に入れて、砂糖水であれば「10分」ハチミツであれば「3~5分」置いてから取り出しましょう。
コーティングをしっかりとする為には、高い濃度と長い時間が必要という事ですね。
しかし、酸化防止の効果は半日から長いと1日中持つ事もあります。
味に敏感な方や、長時間りんごの変色を防ぎたい方にはおすすめの方法ですね。
まとめ
・りんごの変色は酸化が原因。
・酸化は酸化酵素の働きによって起こる。
・化学反応を利用する塩水やビタミンC水溶液は効果的。
・砂糖やハチミツを使って表面をコーティングする方法も効果あり。
りんごの変色について詳しく解説をしてきました。
変色の理由は酸化でしたが、酸化を防止する方法は色々とありどれも特徴的です。
短時間で効果がある塩水。ビタミンCに浸ける方法は、栄養素がプラスされそうな気がしますよね。砂糖やハチミツで酸化防止をしながら、一味違うりんごを楽しむのも面白そうです。
あなたはどの方法を使ってりんごの変色を防ぎますか?ぜひ挑戦してみてください!